信國太志×米原康正×仲正昌樹×菩提寺伸人 トークイベント第二弾 抜粋

投稿日:2018年07月12日

 

photo by yoko

一部変更、訂正を加え増刷二版目の書店販売を開始いたしました。現在二版目は阿佐ヶ谷ネオ書房で現物在庫があることが確認されています。(2021/7/7更新)

※少量生産本でもあり現在流通が不安定な状況で、大変ご迷惑をおかけし申し訳ありません。

5月中旬発売、早々ご好評頂き、もう既に出版元の在庫も数える程となりました。ありがとうございます。今現在、重版の予定は決まっていませんので、ご興味のある方は下記書店などでお早めにご購入ください。(2021/5/22更新)

現在新宿のブックユニオン、くまざわ書店武蔵小金井北口店、紀伊国屋書店新宿本店、新宿の模索舎、ジュンク堂書店池袋本店、ブックファースト新宿店、神保町の小宮山書店に現物在庫があることが確認されています。 (2021/5/21 更新)

書籍『東京80年代から考えるサブカル』(図書新聞社)が刊行されます。

5月13日〜14日に神保町の小宮山書店、新宿の紀伊國屋書店ブックファーストブックユニオン(ディスクユニオン)等で販売されます。

菩提寺

米原

仲正

信國 聴いていて、トラップはいろいろな要素があるけど、革新的ではないですね。懐かしい感じはあれど。

(再び、映像鑑賞)

米原

菩提寺

仲正

菩提寺 一般的に最近のラップは詰め込み型の音が多いような気がしますが、仰るようにトラップはテンポが遅いことと、音数が比較的少ないのが特徴ですね。反復もしくは繰り返しを続けていると、音楽における時間的要素が少なくなる。ヨーロッパの伝統的音楽やそれにならった形式の音楽にあるような一線型の時間経過や起承転結が希薄になってくるというわけです。

米原 だから2分台、3分前半の曲ばかりで長くならないんです。

菩提寺 やはりそうですか。構造や雰囲気がわかればいいので短くても構わないという感じ、メロディが変化したり楽器が多かったりすると、そちらに意識が向いてしまう。しかし少なければ、ちょっとした変化を追っていくことによって(ヨーロッパの)ミニマル音楽的になる。日本の古典的な音楽、例えば御神楽、舞楽などは時間の概念があまりなくて、空間に堆積していくような音楽と言われてます。そういうものに近いのではないかという気がします。昔中国から伝来したと言われる雅楽はそれに通奏低音的に笙が奏される。先ほど観た中国のアーティスト クリスウーも、金物の刻んでいる部分の速度はかなり速かったけれど繰り返しだし、軸となるテンポはやはり遅いという傾向がありますね。向こうはまだ歌になっていたけれど、この日本の曲は繰り返しの要素が強い。あとアメリカのものはインド的な音源使ってるのがありましたね。ラガーとかインド音楽とアメリカの初期ミニマル音楽は密接な関係がありました。もちろん各々トラップのアーティストが難しいことを考えた上でやってるわけではないだろうけど。

信國

菩提寺

米正

菩提寺

仲正

菩提寺 ラップは、技術的に稚拙だった頃から反復、繰り返しをしていました。当時の器材の関係からも。初期のラップは、ある種テクノ、もっと言えばテクノ以前の一部のジャーマン・ロックに近いような感じがあった。ジャーマン・ロックから、テクニックがないと言われるパンクが影響を受けたのは今はとなっては定説です。それからDTM(デスク・トップ・ミュージック)の時代からDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)の時代、エフェクトも含め同期させて簡単にコントロールできる音楽ソフトが出て来ます。昔はサンプラーもなく、シーケンスを作るのもかなりの技術か演奏力が必要だった。もちろん音源も既製品はなく、自分で作るしかなかった。テープループをいくつも作って操作し、エフェクトもそれに合わせてリアルタイムで操作してかつミキシングもかなり細かくやらないとできないとか、同時にいろいろなものが安易にはきれいに同期できなかった。その結果、自ずとこの手の音楽は「難しい音楽」になって、一般ウケしなかった。それが今、一般的な音楽でこういうことになっているというところが僕からすると面白い。でもたとえ音楽の形式上は近くても信國さんが仰ったように僕も一部を除いてトラップは面白いとは感じなかった、そこが前回の「柔らかいニューウェイヴ」の話と繋がるところかと思います。

米原

菩提寺

仲正

米原

菩提寺

(三度、映像鑑賞。黒人のトラップ)

©JUN

米原 〈Bali Baby〉というアトランタの女の子です。

仲正 やっぱりリズムが早いですね。

米原 黒人は音を2分割とか4分割して動くんです。だから早い。コンサートでも黒人のオーディエンスはみんな飛び跳ねてますよね。

仲正

米原

仲正

米原 トラップは、顔の近くで手を動かすことが多いです。この曲は「Enemies」といって、仲が良かった女の子と喧嘩して、その子のトラップを使って「あなたは友達のふりしているけど敵よ」と歌ってます。冒頭で、女の子の写真を弾丸で打ち抜いているシーンがあるけど、それが敵の女の子。でもリズムとしては、「喧嘩しているぞ」という響きは感じない。

――ラップは、敵対関係、言い争いから始まるけれど、トラップはそういう要素はない。というより、メディアの発展によって、みんなが音楽や画像をミックスしたり同期させることがやりやすくなった面が見て取れますね。

米原

菩提寺

photo by s koshino

米原 前回も話したけど、ヒップホップの時代からはもうすべてサンプリング。既にある音の組み合わせで、自分たちの音を作るわけじゃない。リズムボックスの中に入っているビートをいかに自分のスピードに合わせるかとか、いかに面白い音をサンプリングしてきてそこに載せるか、というところから始まっているよね。

菩提寺 ファッションも元々、サンプリング、引用だったというお話ですよね。

信國 僕が受けたイギリスの教育では、デザインがどうこうよりも、リサーチを重要視していました。プレゼンする時、まずリサーチを見せないと、「あなたは天才か、気違いか、どちらかですか?」と訊かれます。天才であれば神がかっていて、何もないところがアイディアが降りてくるかもしれないけど、それは滅多にないよね、ということです。つまりリサーチありきなんです。

米原 DJもサンプリングのネタをいかに持っているかによる。

――編集作業が重要になるわけですよね。

信國太志×米原康正×仲正昌樹×菩提寺伸人(菩提寺光世 司会)|2018.07.12

2018.7.12 投稿|